謙譲語「存じません」「存じ上げません」の意味と用法を解説!例文豊富です!

内容を把握していない対象に対し、目上の人から知見の有無を問われたら何と答えますか。

「知りません」あるいは「わかりません」と回答しても、さほど問題にならないかもしれません。しかし問いに対するベストな答え方としては、「存じません」もしくは「存じ上げません」が妥当でしょう。

ビジネスシーンにおいて知見の有無は、日々やり取りされる問答の1つ。「存じません」と「存じ上げません」は、ビジネスパーソンにとって避けて通れない必須ワードというわけです。

前提知識を踏まえ、「存じません」と「存じ上げません」の意味や性質について詳しく掘り下げてみましょう。

この記事の内容

敬語表現「存じません」「存じ上げません」の意味を詳しく解説

「存じません」と「存じ上げません」は、敬語表現の中でも扱いが難しいとされる謙譲語に分類されます。

まずは謙譲表現の原型である「知らない」「分からない」から、基礎知識を固めていきましょう。

「知らない」「分からない」の意味

そもそも、「知らない」と「分からない」とはどういう意味でしょうか。

「知らない」とは対象についての知識や情報を持っていないということ。「分からない」とは対象について理解できない、もしくは理解が及ばないという意味です。

「知らない」は知識の有無についての語句。一方「分からない」は理解の是非が問われる語句であり、表面上よく似ているもののそれぞれ別の意味があるという点を押さえておきましょう。

「存じ上げません」は「知りません」の謙譲語

「存じ上げません」は「知りません」の謙譲語。付言すると、「分からない」の謙譲語ではありません。

果たしてなぜ区別する必要があるのか、理由については次の項で説明します。

上司や目上の人に対して使う

謙譲表現とは自分がへりくだり、相手を立てる表現方法。すなわち上司や取引先など、目上の人に対して使う言い回しです。

従って「存じません」「存じ上げません」ともに、目上の相手に対して使うべきだといえます。

自分の無知を詫びる気持ちが含まれる

「存じ上げません」と発言する場合、ただ知らないという事実を知らせるだけでなく、相手に対して自らの無知を詫びる気持ちが含まれます。

「恐れ入りますが」「恥ずかしながら」などを前置きとして付け加えれば、恐縮の意とともに「無知で申し訳ない」というニュアンスを伝えることができるでしょう。

使用する場面が違う?「存じません」と「存じ上げません」の使い方

「存じません」と「存じ上げません」という似た表現の使い方を解説していきます。

「存じません」は人以外の物事や場所が対象

「存じません」は人以外の物事や場所が対象の場合に使われます。例えば取引先の新商品に関する話題を投げかけられた際、新商品の存在を「知りません」と答えてしまうと失礼に当たりますよね。

不勉強であること以上に、言い回しが稚拙で相手先に敬意を払っていないことが問題です。

上記のケースにおいては、取引先の新商品に関する知識がないことを無理に隠さず、「存じ上げません」とへりくだって回答するのが正解。

すなわち「知らない」ではなく、「存じ上げません」という謙譲語で受け答えするのがポイントということですね。

「存じ上げません」は人が対象

「存じません」との違いとして、「存じ上げません」の場合は「人」が対象です。敬語ではなく、元の言い方で考えればわかりやすいでしょう。

例として仮想の得意先、B商店の佐藤常務を想定します。敬語表現を抜きにすると、「私は佐藤常務という人物を知りません」という言い方は成り立ちますよね。

一方、「私は佐藤常務という人物をわかりません」という日本語表現は存在しないのです。

以上を踏まえると「存じ上げません」の元の語句が「知りません」であり、「存じ上げません」の対象は人に限られるという点についてもご理解いただけるでしょう。

「存じません」や「存じ上げません」をビジネスで使う時の注意点

謙譲語は敬語表現の中でもデリケートな部類。「存じません」や「存じ上げません」は、むやみに使うべき言葉ではありません。

自分がへりくだるべき状況、あるいは立てるに相応しい相手などを見極める必要があります。

突然へりくだると相手に気を遣わせる場合もあるもの。懸念や心配を減らすためにも、ビジネスシーンで「存じません」や「存じ上げません」をスムーズに使うための注意点やコツを紹介します。

注意点1:クッション言葉をつけないと多少失礼な印象を与える

注意事項の1つとして、クッション言葉を挟むべきという点が挙げられます。

無知を恥じたり悪びれたりという前触れなく、いきなり「存じません」や「存じ上げません」と発言すると相手に失礼な印象を与えてしまうからです。

人に対して「恐れ入りますが」「申し訳ございませんが」「失礼ながら」などとあわせて使う

人物に関する話題の際、対象について自分が無知であることを目上の相手に伝える際には「存じ上げません」というのがセオリー。

「存じ上げません」の前置きに使うクッション言葉としては、「恐れ入りますが」「申し訳ございませんが」「失礼ながら」というものが妥当でしょう。

無知であることを恥じ、申し訳なく思っているという姿勢を打ち出せるため、相手の印象を損ねることなく話を進めやすくなります。

物や状況に対して「私の勉強不足で」「お恥ずかしいのですが」などとあわせて使う

物や状況に関する話題が挙がった際、対象について知識がない場合は「存じません」と伝えるのが一般的。「存じません」に前に置くクッション言葉としては「私の勉強不足で」「お恥ずかしいのですが」が適切です。

前触れなく「存じません」と発言すると、あたかも相手の話に興味がないかのような印象を与えてしまいますよね。

決して興味がないのではなく、あくまで知見がないという事実を素直に伝えるにも「私の勉強不足で」「お恥ずかしいのですが」と前置きするとよいでしょう。

注意点2:メールや文章で質問する時は「ご存知」を使うこともあり

注意事項の2つ目として、メールや文章で相手に質問する際には「ご存知」という敬語表現を使うべきです。

具体的な例としては「ご存知でしょうか」という問いかけ方が典型的でしょう。

「ご存知」とは、相手が「知っている」という状態を尊敬表現したもの。相手がご存知かどうかを尋ねる問いかけが「ご存知でしょうか」という言い回しなのです。

目上の相手に対し、「知っていますか」という問いかけ方は明らかにNG。「知っていますか」とは口語表現であり、まるで友人同士のやり取りになってしまいます。

やはり相手を敬い「ご存知でしょうか」という質問の仕方を選ぶ必要があるというわけです。

目上の人や取引先には更に丁寧に「ご教示ください」などとあわせて使う

目上の人や取引先に対して丁寧に質問をする場合は、上述の「ご存知」と組み合わせて「~についてご存知でしたら、何卒ご教示ください」などという言い方をするとよいでしょう。

ただ単に「~についてご教示ください」というよりも、「~についてご存知でしたら」という前置きがあった方が受ける印象はよいもの。

クッション言葉も付け加えて「恐れ入りますが、~についてご存知でしたらご教示ください」という文章にすれば、相手に対する気遣いと敬意を両方表すことができ好印象です。

ビジネスで使える!シチュエーション別「存じ~」の例文5選


「存じ~」は幅広く使える敬語表現。使いどころを見極めれば、非常に重宝する言葉です。

5つのシチュエーションを想定した例文を紹介します。

「課長、A商店の小林さんが昇進されるそうです」
「もう情報はキャッチしてるよ!」
「なんと、もうご存知で!さすがです」

「IOTってわかる?」
「勉強不足で、存じません…」
「Internet Of Thingsの略だよ。取引先が相手でなくてよかったね」

「大株主の森田さんって知ってるかい?」
「存じ上げません」
「ウチの有力OBの中でも、特に功績の大きい人だ。Y商店との販路を開いたのがこの人なんだよ」

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「存じません」の類語や言い換え表現を例文と一緒にチェック

物や状況に関する謙譲語「存じません」には類語や言い換え表現があります。一例をみてみましょう。

「分からない」「知らない」という意味の丁寧な言い回し「わかりかねます」

「分からない」「知らない」の敬語表現は「存じません」だけではありません。丁寧語で「わかりかねます」という表現もOKです。

「判断しかねる」のように、「~かねる」とは動詞部分の内容を否定する補助動詞。敬語表現しない場合は「わかりかねる」という言い方になります。

「わかりかねる」をさらに丁寧に表現したものが「わかりかねます」だというわけです。

自分自身の行為や言動に対して使用「存じておりません」

「存じません」と同義の表現として、「存じておりません」という言い方もあります。

「存じません」よりも若干硬い言い回しであり、主に自分自身の行為や言動に対して使います。

人限定で「見たことがない」という意味で使用「面識がございません」

「見たことがない」⇒「会ったことがない」という意味で、「面識がございません」という言い回しも可能です。

会ったことがある、もしくは面識があるとは人に限って使われる表現。同様に「面識がございません」という場合、対象は人に限られることを覚えておきましょう。

「わかりません」の言い間違い「わかりかねません」は誤用なので注意

「わかりません」もしくは「わかりかねます」の誤用例として、「わかりかねません」というものがあります。言い慣れている人が口頭で間違うことは少ないものですが、メールのように文章だけでやり取りする場合は意外と起こり得ます。

文章を書き慣れている人でも一旦「わかりません」や「わかりかねます」と記述した後、言い回しを修正しようとすると原型が半端に残ってしまい、結果として「わかりかねません」という誤表記になってしまう場合があるのです。

特に文章の場合はフレーズ全体がひらがなであり、間違いに気づきにくいため十分に自己チェックする必要があるでしょう。

「存じる」を使用することで相手に丁寧な印象を与えることができる

「存じる」を適切に使うと、相手に丁寧な印象を与えられます。

応用編としてチェックしてみましょう。

「存じる」は「知っている」ではなく「思う」という意味で使用

「存じません」は「知らない」の謙譲語だと述べました。

一方「存じる」の場合は「知っている」ではなく、「思う」という意味の謙譲語です。

「~と思います」もしくは「~かと思います」という言い方をひと工夫し、「~と存じます」や「~かと存じます」と表現するだけで一気に丁寧な印象を与えられるでしょう。

謙譲語「存じる」を使用した例文をチェック

「思う」の謙譲語「存じる」を運用し、例文を2つ作ってみましょう。

明日の雲行きは不穏。折りたたみ傘を携帯される方がよろしいかと存じます。

恐れ入りますがこの靴、お客様の足サイズと比べてやや小さいものと存じます。

ビジネスで使える「存じません」「存じ上げません」の英語表現とは?

最後に「存じません」「存じ上げません」の英語表現を紹介して締めくくりましょう。

・「存じません」の英語表現:
“I’m sorry, I have no idea.”
(すみませんが、わかりません)

・「存じ上げません」の英語表現:
“I’m afraid I don’t know about it”
(残念ながら、知りません

“I don’t know”“have no idea”を出し抜けに使ってしまうと、ちょうど日本語の「知りません」「わかりません」と同様にぶっきらぼうな印象を与えてしまいます。

英語では日本語の謙譲表現とイコールの言い回しはありませんが、その代わりに少し婉曲した表現で印象を柔らかくするというアプローチをとるのです。

少しの工夫で印象を和らげるという意味では、敬語と同じ心遣いがあるということですね。

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