「これに懲りず」の意味と使い方を解説!ビジネスシーンには使えない?例文も紹介!

「懲りる」という動詞がありますよね。口語表現の「もうこりごりだ」も、漢字に直せば「もう懲り懲りだ」です。

社会問題のニュースをよく見ている人なら、「懲役」「懲罰」の語句でも使われる字であることにもお気づきでしょう。

「これに懲りずに」というフレーズのポイントは「懲」という文字。ビジネスシーンで「これに懲りずに」という言い回しが使われないのも、やはり「懲」に理由があります。

「懲」について理解するとともに、フレーズ「これに懲りずに」についてもセットでマスターしましょう。

この記事の内容

ビジネスに不向き!?「これに懲りず」の意味や正しい使い方を解説

「これに懲りず」は慣用表現であり、ビジネスシーンには相応しくない言い回しといわれています。

ビジネスシーンに不向きな理由を知るには、やはり「懲」および「懲りる」という語句の意味を理解する必要があるでしょう。

「これに懲りず」の意味は自分を励ますフレーズだった!

最初に「懲りず」が「懲りる」の活用形であることを把握する必要があります。というのも「懲りる」の語尾に否定の助動詞「ず」を付けることにより、活用させたものが「懲りず」だからです。

まずは「懲りず」の原型である「懲りる」の意味を押さえておきましょう。そもそも「懲りる」とは失敗して散々な目に遭い、二度とやるまいと考える意味。「懲罰」「懲役」も犯罪者を懲らしめて、更生させるという趣旨の言葉です。

逆に「懲りず」や「懲りない」とは、失敗して酷い目に遭ってもめげずに、再挑戦するという意味だといえますよね。

以上を踏まえると、「これに懲りず」というフレーズは「投げ出したり諦めたりせずに」という意味であることがわかります。すなわち「これに懲りず」とは、自分に対する励ましの言葉なのです。

「これに懲りず」が使われる背景とは?

「これに懲りず」とは、自分に対する励ましの言葉だと述べました。ミスや失敗をしてしまった時、気落ちして塞ぎ込んでしまうのも無理はありません。「もう懲り懲りだ」と、投げ出す人だっているでしょう。

一方、失敗しても投げ出さずに立ち直り、改めて仕事や責務に取り組む人もいるはず。失敗しても投げ出さず、放棄しないことこそ「これに懲りず」が使われる背景なのです。

自分自身に「これに懲りず」を使用することで謙虚で前向きな姿勢を示せる

自分自身で「これに懲りず」というと、諦めずに再挑戦する前向きな姿勢が感じられますよね。散々な失敗を味わっても、投げ出さずに再挑戦するという心意気です。

責任転嫁せずに自らの失敗を認め、改めようとする姿勢は謙虚で前向きなもの。自分自身に対して「これに懲りず」を使用するのは常套表現の1つであり、自己研鑽のアプローチとしても大事な姿勢といえるでしょう。

「これに懲りず」の正しい使い方を例文でチェック

「これに懲りず」の意味や用法を踏まえ、例文で具体的な運用法をチェックしましょう。

「簿記検定の結果、どうだった?」
「アウト。2点足りなかった~、悔しい!」
「マジか!小問1つ分だね…心中察するよ」
「まぁ、これに懲りずにリトライするさ」

人気スポーツTV番組、SASUKEにタレントの樽美酒研二が出場するのが恒例化している。初出場は2012年、1stステージで脱落。これに懲りずに再挑戦を繰り返し、2018年大会では難関とされる3rdステージまで進出した。チャレンジに失敗しても、「俺はまだまだ懲りてませんよ!」と発言する前向きな姿勢は実に清々しい。

反省し、改善する行動が伴ってこそ「これに懲りずに」の意義がある。ネガティブな意味合いの強い「諦めが悪い」とは、同義でないということだ。

「これに懲りず」がビジネスマナーでは不適切な3つの理由

「これに懲りず」はビジネスシーンに相応しくありません。

自分に対して使う分には構いませんが、会社・職場といった相手ありきの環境で使うのは不適切。人間関係にヒビが入ってしまうおそれがあります。

ビジネスマナーとして「これに懲りず」がNGとされる理由は、大別すると3つです。

ネガティブな意味が含まれる「これに懲りず」は敬語として違和感

「これに懲りず」とは散々な目に遭ったことが前提となるフレーズ。

敬意を表すべき相手に対し、「散々でしたね」「ひどい失敗をしましたね」などと声をかけることはできるでしょうか。答えはもちろんNOです。

ビジネスマナーとして、目上の相手に対して失敗の事実を前提とした発言はするべきではありません。なぜなら懲りず」という発言そのものに、相手を見下し憐れむようなニュアンスが含まれるから。


いかに謙譲語や丁寧語を盛り込み敬語表現を駆使しようとも、発言の趣旨そのものが失礼な場合は敬意を伝えられないのです。

相手を敬い自分の品位を保つためにも、単に社交辞令や挨拶としてでなく、ビジネスマンとして相応しい言葉選びを心がける必要があるといえるでしょう。

「これに懲りず」は自分や目下の人に使われる言葉で目上の方には使えない

先述のとおり、「これに懲りず」には相手を見下すニュアンスが含まれます。目上の相手に対して「これに懲りず」と発言してはいけません。特に取引先や上司に対する使用は厳禁です。

「これに懲りず」は自分のほか、目下の人に使う用法も許容されているものの、相手の失敗に触れるニュアンスが避けられません。

たとえ目下の相手であっても、「これに懲りず」と発言する場合には心情を察する必要があるでしょう。信頼関係を壊さないためにも、「これに懲りず」は自分のみに対して使う方が無難です。

ただし気心が知れた同輩や後輩など、ざっくばらんに接せられる間柄の場合は例外。度々失敗してもめげずに頑張る後輩に対し、いわばお約束の定番フレーズとして「これに懲りず」と声をかけるのも優しさの一つかもしれません。

自分に非がある謝罪なのに「これに懲りず」というフレーズは大変失礼

自分に非があることが明らかな場合に、「これに懲りず」というお詫びや謝罪をするのは厳禁。なぜなら前向きな姿勢ばかりが目につき、まるで反省していないかのような印象を与えてしまうからです。

お詫びや謝罪の際には言い訳NGであるのと同様、「これに懲りず」という発言もすべきではありません。

目上・目下の如何を問わず、「これに懲りず」はあくまで自分に対してのみ使う言葉だと自ら言い聞かせるのもアプローチとして有効。考え方を単純化でき、対人関係で言葉遣いによるトラブルを生まずに済むでしょう。

例文で紹介「これに懲りず」の言い換えや似たニュアンスのお詫び表現

「これに懲りず」は、ビジネスシーンで使うには不向きなフレーズ。「これに懲りず」と同じニュアンスを伝えたい場合は、別の言い方が必要です。

「これに懲りず」の言い換えや、似たニュアンスのお詫び表現を考えてみましょう。

「二度とこのようなことがないよう」

依頼主や目上の相手に対し、失敗に関する反省の意を述べる際には「二度とこのようなことがないよう」と伝えるのも有効です。

「同じ失敗は繰り返さない」という反省の弁であり、自戒と改善の意志を表すフレーズといえます。

「お見限りになりませんよう」

甚だしい痛手や損失を被り、会社や上司に迷惑をかけてしまった場合に使うお詫びの言葉として「お見限りになりませんよう」というフレーズもあります。

見限られてもおかしくないほどの失敗をしでかし、いたく反省しているという態度を示す内容ですね。

注意すべき点としては反省のみで改善につながるメッセージがなく、自分の立場だけで発言しているように聞こえがちであること。

また相手に対して下手に出過ぎており、卑屈な印象を与えてしまうおそれもあります。注意点を把握した上で、使いどころにも気を付ける方がよいでしょう。

「次の機会には是非」

今回は失敗してしまったものの、次の機会があるとわかっている場合には「次の機会には是非」という言い方も可能です。

例えば少人数で仕事を回しており替えが利かない状況であれば、一度失敗したからといっても安易に担当を替えられないもの。次回も続投しなければならない場合は多々あるでしょう。

「次の機会には是非」と宣言することで、逃げずに責務を果たそうという不退転の決意を表すことにもなります。

ビジネスメールで謝罪「これに懲りず」に代わる英語表現とは?

「これに懲りず」はいかにも日本語らしい言い回しですよね。しかし意味する内容はシンプルであり、外国語にも似た表現がありそうです。

英語のビジネスメールでお詫び・謝罪をする際、「これに懲りず」に代わる表現を考えてみましょう。

・“I promise I won’t make the same mistake again.”
(約束します、同じ失敗は繰り返しません)

・“Next time, I’ll make sure to finish it on time.”
(次こそは時間通りに終わらせます)

英語の場合、反省の意として「これに懲りず」と同様の表現をする場合は「次こそ失敗しない」「次は成功させる」という前向きなニュアンスが押し出されます。文化の違いとしても興味深いですね。

「これに懲りず」を使用するシーンは誠心誠意で反省する姿勢を忘れずに!

先述のとおり、「これに懲りず」はビジネスシーンで積極的に使うべき言葉ではありません。

それでもつい無意識に「これに懲りず」と発言してしまったり、あるいは目上の相手から「もう懲りたかね?」などと問いかけられる場面もあったりするでしょう。

ビジネスシーンで「これに懲りず」と発言する場合は、単に懲りない姿勢を表すだけでは不十分。というのも自分に対して言うのでなく、相手に向かって発言するからです。

目上の相手にお詫びする際には懲りない姿勢に加えて、反省と改善の意志を示さねばなりません。

誠心誠意で反省していることを相手に伝えれば、次のチャンスを与えてもらえることでしょう。

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