「遠慮なく」の意味と使い方を解説!ポイントはコミュニケーションにおける気遣い!

「遠慮なく」という決まり文句があります。同じ語句にもかかわらず、自分自身が使う場合と相手に対して使う場合とで、意味合いが変わってきますよね。

上記のように「遠慮なく」を単体で捉えると複雑に見えるもの。一方、前後関係とのつながりに注目したり、英訳したりすると意外なほどスムーズに理解しやすくなります。

「遠慮なく」を上手に使ってコミュニケーションを円滑に行えるようにするべく、記事をまとめます。

この記事の内容

「遠慮なく」の意味を紹介!

まず最初に「遠慮なく」とは、どんな意味のフレーズなのかを紹介します。

フレーズを理解するには、最小単位の語句から辿るのがセオリー。順番にチェックしましょう。

「遠慮」の語源は?

「遠慮」の語源は、論語・衛霊公に記された「遠慮近憂」という一節です。

「遠慮近憂」の大意は遠い将来のことまで見越さすに過ごしていると、やがて問題は身近に迫ってくるという趣旨。四字熟語「深謀遠慮」の語源でもあります。

熟語「遠慮」の意味

「遠慮」のルーツが中国の論語、日本江戸期の刑罰にあるという事実は、意外と知られていません。

「遠慮」が現代語と同じ意味で使われるようになったのは、江戸時代からといわれています。日本における「遠慮」は元々、江戸幕府の定めた刑罰の名称によるものです。

刑罰としての「遠慮」は、主として自宅での籠居という意味。時代劇に登場する「蟄居(ちっきょ)」と同義です。

「遠慮」の「自宅での謹慎」という意味から転じて「慎む・控える」というニュアンスになったと考えれば、自然な流れといえるでしょう。

「遠慮なく」の意味

先述の通り、「遠慮」とは「慎む・控える」という意味です。「遠慮なく」の場合は意味が反転するので、「慎み控えることなく」という否定の形になります。

書き出しで述べた通り「遠慮なく」には2通りの用法があり、使う対象によってニュアンスが変わるのが特徴。

語句の性質について理解するには使い方まで踏み込む必要があるため、次項に説明を譲ります。

「遠慮なく」の使い方をチェック

「遠慮なく」は相手とのコミュニケーションを前提とした言葉です。自分の意思を表す場合もありますが、この場合も相手に対する意思表示をするという点が大事。独り言としての「遠慮なく」は成立しません。

前提知識さえ押さえておけば、「遠慮なく」の性質についても理解が容易になるはずです。

相手に使う場合は「気遣い」を表す

一般的にいって、「遠慮なく」は相手に対する気遣いを表す用法が主でしょう。相手の判断や行動を促すだけでなく、状況によっては権利を相手に譲る場合も考えられます。

相手が引け目や負い目を感じてしまうような場面で「遠慮する必要はない」と声をかけられれば、次のアクションに対する支持を得たことになりますよね。いわば見届け人がOKを出したのと同じ形です。

自分自身では判断しかねる状況でも、第三者から「遠慮なく」の一言があるだけで気が楽になるもの。「遠慮なく」とは、相手に対する気遣いの言葉なのです。

自分が使う場合は「遠慮せずに」という意味

自分が「遠慮なく」と発言する際は「遠慮せずに」「思った通りに」という意味を表します。

自分が使う場合のポイントとしては、「遠慮せずに」が言外の意味を伴うこと。すなわち前触れなく突然アクションするのでなく、相手に対して「一言断りを入れてから行動に移る」というニュアンスが含まれます。

「遠慮なく」とはいっても文字通りではなく、わがままに振る舞うこととイコールではありません。やはり相手に対する気遣いが込められているというわけです。

ちなみに他者とのやり取りの中では、「お先にどうぞ」「お召し上がりください」などと水を向けられる場合もあるもの。

相手の厚意に対する受け答え・返事の言葉として「遠慮なく」を使うのも有効ですね。

「遠慮なく」を使ったフレーズを紹介

基礎知識を踏まえ、「遠慮なく」と組み合わせたフレーズを取り上げます。馴染みのあるものも含まれるでしょう。

遠慮なく頂戴いたします

「遠慮なく頂戴いたします」は明快な意思表示のフレーズで、自分が相手に対して発言する要領で使います。

「頂戴いたします」は謙譲語と丁寧語を組み合わせた、かしこまった言い回し。従ってコミュニケーションの対象は、目上の相手であることがわかりますね。

以上より、「遠慮なく頂戴いたします」を使うべき場面は、目上の相手から厚意を受け取る時が該当します。

遠慮なくどうぞ

「遠慮なくどうぞ」とは相手に対し、判断や行動を促す際にかける一言です。主な状況としては相手にものを与えたり、もしくは譲ったりする場面などが当てはまります。

「遠慮なく」だけで意味が通じる用件であっても、相手をプッシュする意味で「どうぞ」と一言添えればより効果的。声がけされた相手とすれば水を向けられた態勢になるため、次のアクションが取りやすいですね。

遠慮なくお申し付けください

「遠慮なくお申し付けください」は、主に接客業で使われることが多いフレーズです。簡単にいえば御用聞きの言葉で、相手からの質問や注文などを聞き入れる態勢を表す意味があります。

接客サービス上の挨拶や社交辞令の意味合いも含まれるものの、「遠慮なくお申し付けください」の一言があるかどうかで、受ける印象は大きく異なるはずです。

「遠慮なく」の類語

「遠慮なく」のニュアンスは比較的シンプルで、日常的なコミュニケーションの中に存在するもの。同じ意味を表す語句や行動は、生活の中に浸透しているはずです。一例を見てみましょう。

気兼ねなく

「気兼ねなく」は、「遠慮なく」とほぼ同じ要領で使える類語。単語「気兼ね」は相手の思惑に対する気配り・心配を表す語句です。

熟語で活用する際も「気兼ねする」「気兼ねせず」「気兼ねなく」という要領で使えるため、運用面でも「遠慮」および「遠慮なく」と同義といえます。

お気遣いなく

「お気遣いなく」とは、相手の気遣いに対してやんわりとした断りを表すフレーズです。

尊敬の敬語であるのがポイントで、結果的に断りを入れるにせよ、相手からの厚意をありがたく思う気持ちが表現されています。

例えば他者からの厚意に対して「結構です」もしくは「必要ありません」と答えるよりも、「お気遣いなく」と返答する方がずっと丁寧で印象が良いはずです。

相手を気持ちを尊重しつつ、自分の意見もしっかり主張するという意味で、英語の“No, thank you.”に近いフレーズといえるでしょう。

お構いなく

「お構いなく」も相手からの厚意を断る言い回しの1つ。「構う」とは気にかける・積極的に関与するという意味なので、「構わず」や「お構いなく」など否定形の場合は「気にする必要はない」というニュアンスを表します。

注意すべき点として、上述した「気兼ねなく」「お気遣いなく」と比べると「お構いなく」はややくだけた表現。時と場合によっては失礼に当たる可能性があるため、むやみに使うのは避ける方がよいでしょう。

「遠慮なく」の敬語表現は?

「遠慮なく」は気遣いの言葉であり、性質上丁寧な表現に違いありません。それでも、目上の相手に対して形を変えずに使うのは不適切。

ひと工夫して、敬語表現を考えてみましょう。

「ご遠慮なく」

最もシンプルな敬語表現が「ご遠慮なく」。尊敬の接頭語「ご」を付け、相手の「遠慮」という行為を敬う言い回しです。

元々が丁寧なフレーズなので、シンプルな敬語の形でも目上の相手に対して問題なく使えるようになります。

「ご遠慮なさらず」

より丁寧な言い回しを選ぶ場合は、「ご遠慮なさらず」というのがベスト。尊敬の動詞+尊敬の補助動詞による連続敬語で、最大級の敬意を表現する言い回しといえます。

「遠慮なく」の英語表現を紹介

最後に「遠慮なく」のニュアンスを英語で表現してみましょう。ごくシンプルな言い回しなので、スムーズにご理解いただけるはずです。

“Please don’t care .”

“Please don’t care .”のイディオムで「お気になさらず」「どうぞ気にせず」といったニュアンスを表します。

“don’t care .”だけだとラフな印象を与えてしまうので、より丁寧な言い回しをするため間投詞“Please”を付けるのがセオリー。

英語にも、日本語の敬語表現とよく似た理屈があることが窺えますね。

“Don’t hesitate”

“hesitate”という単語は「ためらう・躊躇する」という意味を表します。応用したイディオム“Don’t hesitate”は、「ためらわず」すなわち「遠慮せず・遠慮なく」というニュアンスです。

厳密には「遠慮」と「躊躇」はイコールではないので、声をかける相手が何らかのアクションを躊躇している場面に使うべき表現といえます。

まとめ

フレーズ「遠慮なく」は、使う対象によって意味合いが変わると述べました。注目すべきは相手とのコミュニケーションの有無です。

「遠慮なく」の対象が自分であっても相手であっても、相手との対話においては気遣いを表すことになります。

文字通り「遠慮の要素が一切ない」という状況は、他者の存在がなく、自分一人で完結する場面に限られるのです。

「遠慮なく」という言葉の本質を正しく理解できれば、社交辞令ではなく、コミュニケーションにおける気遣いの言葉として上手に活用できるようになるでしょう。

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